2023.04.26勉強会報告『メタバース(仮想空間)における知財保護』

前年同様、三村雄一税理士事務所(Zoom併用)で開催いたしました。講師は、弁理士の中村祥二先生にお願い致しました。話題になってから言葉が馴染んだメタバース(仮想空間)をテーマに知的財産の扱いについてお話頂きました。

メタバース(仮想空間)について

米国の有名な投資家であるマシュー・ボールがメタバースの条件を下記7つであると定義しました。
1)永続的であること。 止らないこと
2)リアルタイムのライブ空間であること
3)同時に接続出来るユーザ数に制限が無いこと
4)経済性があること
5)デジタル世界と現実世界で垣根の無い体験が出来ること
6)相互運用性があること
7)幅広い人々の貢献によってコンテンツ、体験が出来ること

定義によってはメタバースか否か分かれるサービスがあるかと思われますが、この条件を満たすものをメタバースとし、その中において知的財産をどのように扱うのかが問われるようです。

メタバースに関係する知的財産

知的財産は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、著作権、著作隣接権、育成者権、営業秘密等に分類されます。メタバースでは、主に意匠権や商標権、著作権に注意が必要です。その中でも著作権については人格権と財産権に分かれ、財産権である複製権(ある著作物を複製する権利)と公衆送信権(インターネット等により、著作物を公衆向けに「送信」することに関する権利)の侵害が該当する場合が多いようです。

建築物と美術(原作品)

建築物と美術(原作品)においては例外に該当する場合があります。例えば、東京スカイツリーなどの公の場に存在する建築物の場合、全く同じ建築物を複製しない限りは著作権侵害となりません。ただし、デザイン(3D含む)で商標登録がされているため、ケースバイケースで判断が必要になります。そのため、メタバース内において模倣した制作物があった場合は侵害にはならないようです。ただし、ロゴ等には注意が必要になります。

まとめ

知的財産は権利側の許容ラインによっても事態が変わる印象があり、メタバースというまだ法整備が間に合っていないサービスに対してどのように考え、保護するのかという姿勢が問われる内容でした。知的財産だけでなく、仮想空間に対する法的なアプローチは今後も課題になる時代だなと思いました。

懇親会の御礼

講師していただいた中村先生、参加していただいた士業の皆様、ありがとうございました。今回は新年度の時期ということもあり少人数での開催となりました。SISIBでは実務的なお話や専門としている分野についてテーマとすることが多いですが、各専門分野におけるこれからの課題も面白いテーマだなと思います。GWがあり、更新が遅れてしまいましたが5月もまた何卒宜しくお願い致します。